始終不捨書

夫れ兵法は、上古の聖代に此の道無く、三皇は言無くして天下を化す。
五帝は天の道に体し地の理に則り、令して兆民に施す。
三王に至て道を以て民を制し、以て衰世を備ヘ、覇王は権道を以て国を制して士を使ひ賞禄を用す。
故に君臣の道に正有り邪有り、正邪の中より闘戦の患有り。
故に兵法を用る。
庶人之を学べば則ち身を治め、君子之を学べば則ち国を治め、天子之を学べば天下を治む。
庶人より王侯天子其の道一つ也。
殊に新陰は吾が祖父宗厳壮年より諸家の兵法を学んで、行も亦兵法、坐も亦兵法、更に二六時中間歇無く之を習ふ。
宗厳七十有余に及び、予に兵法微妙の道を伝ふ。
予も亦祖父の業を継ぎ、兵法を胸臆に掛在して、新陰の中より、奥源妙道を撰択し、一巻の書を賦す。
此の兵法を学ぶ者は、深く胸襟に掛けて、剛柔強弱の端末を明らめば、前に敵無し。
勉めよや勉めよや。

始終不捨書

三摩之位
右重々ロ伝有之

十禁習之事
一面ヲ引事
一身ト手ノ別ル事
一胸反ハ手太刀不展
一胸ニ肱ノ付事
一腰ノ折踞事
一膝ノ踞事
一前ェ及ヒ懸事
一手ノ下ル事
一拳シニテ太刀ヲ使事
右条々口伝有之

十好習之事
一直立タル身之位事
一 高キ構ニ弥高ク展ヒアカリテ仕懸ル位之事
一懸口イカニモ強ケタテゝ懸事
一前エ及ヒ懸ヨリ反ヘキ事
一打込時拳ニ面ヲ付ヘキ事
一脇ノ下罅(すく)ハ手太刀展事
一太刀ヲ使コト肩カイナ惣身ヨリ打山ス可キ事
一小太刀ニテ懸ル時敵早ク打チ出ス時キ先ツ合懸ノ心持モ随時可事
一拍子ノ持チ所太刀ノ物ノ打之事
一足ハ懸ル時モ退ク時モ?タ(かたあし)浮キタル心持ノ事
右条々口伝有之

毎人ニ辟アリ上ノ器用ニモ一二ハ有之其外ハ無窮身ノ辟セ心ノ辟ヲ能々見付第一ノ悪キ所ヲ一ツヅツ直ス可キ事

十問十答之事
一初心ニ従初如功者能クナヲスコト悪先成次第ニ十禁十好ノ習ヲ辟ニサセ手足身ヲ動カシ心ノカタマル所ヲ見付ケ直ス可シ
一身之懸五箇ヲ苦ノ教ノ如ク前ニテ作ルハ悪シ
 身堅マリツマル故也今ハ前ヲ豊ニシテ敵ニ逢テ勝口ノ時五箇ノ心持好
一付之事昔ノ教ノ如ク三寸ノ付悪シ心モ身モ手モ堅ル故也今ハ十里外ト云習有之
一懸之事昔ノ如ク拍子ヲ窺イ懸ルコト悪シ紛ル事アル故也今教重々有之
一上段カミナリノ太刀ニ昔ノ如ク付コト悪シ狭キ故也今ノ教ニ放位ト云有之口伝
一順逆上段霞ノ太刀ニ付ル事昔ノ教悪シ狭故也今ノ位有之
一左車ニ懸口風体昔ノ教悪シ是モ狭故也今ハ位ヲ放レテ開ク心持好シ重々ロ伝有之
一上中下何モ片手大刀ニテクネリ打ニ敵打懸ル時心持勝口二ツ有重々口伝
一身ノ持様高上ニシテ下ルハ好シ低クシテ高上難成シ重々口伝
一初心稽古之時截相悪キ時ハ目迦ルト覚エタルハ悪シハツルル物一ツ
右条々口伝有之

三箇之打之事
右条々口伝有之

八箇之位独稽古之次第
第一人ニ截セテモ背ロ手ニテ懸リ打レテ敵ノ心ヲ見知ル可キ事
第ニ柱ニ向テモ懸リ口チ足ノ停マラス如鳶羽ヲ使カ可歩之事
第三毎物心ヲ合浮キ立ツ様ニ強ク思イ付可キ事
第四万ツ危キ心ノ無キ様ニ心ノ稽古第一也重々口伝
第五打ハ三ケノ打好シ
第六懸ロ道ノ習ノ事
第七打込ム時太刀筋敵ニ一ツ我ニ一ツ習二ツ之事
第八歯ミ子之習之事
右条々口伝之事

懸口三箇之事
          ウタ
          ウツ
          クラ
右重々口伝有之

一上段ノ太刀ニ小太刀ニテ懸ル時キ臂(ひじ)ヲ口餌ニ飼テ仕懸ケ大詰ノハツシカケニ好キコト有之雷ノ逆ノク子リ打ニ拳ノ下事悪シ
一中段ノ構ニ小太刀ニテ懸ル時キ神妙剣ノ位ヲ刃ニテ取リ直立チ偏エ身ニ成リ懸ル心持チ昔ノニ寸五分ノ迦ニ通テ好コト有之
一下段ノ太刀ニ懸ル時ハ其ノ位ニ随ヒ猶モ下リ撈(ろう)イ上ル様ニ懸リ打込ム時キ身籠ミ足ヲ益シ打可シ太刀ノ上ル連テ身ヲ退コト悪シ又味方上段ニテ懸ル時ハ身反テ好コト有之
一上中下何ノ構ニモ一刀両段ノ位ニ仕懸テモ好事有之又懸口ニ伸ル身ミ有リ次第替ル
一中段ヨリ上ハ悉クカサヲ取リ大体ニテ勝可事
一順逆ノ車モ相寸ノ太刀ニテハカサヲ取リテモ好シ小太刀ニテハ其人ニ倚ル可シ
一順逆之車下段ノ太刀ニ小太刀ニテ懸ル時キ水月ニテ位ヲ残スト云事有之
一敵ノ太刀捨ル処ヲ位ヲ残ルハ悪シ
一肩ヲ指コト悪シ
一頤イ(おとがい)反事悪シ
一頸持ノ習ノ事
一小臂(ひじ)ノ折ルニハ太刀刃ヨリ上テ打可キ事
一闇夜深更ノ大事構モ心持モ有之
一小拍子シヲ大拍子ニ仕懸ケ勝ハ昔ノ事縦ハ門敲ク(たたく)如シ其位悪シ今ハ一超直入ノ心持口伝有
一打込時翹(つま)タチ前ニ進ム悪シ
一飛込様成モ悪シ
一遠近之位昔ノ教エ悪今ノ習ニ重々口伝有之
一風水音ヲ知習昔ノ教ハ是モ悪シ今ノ位有之口伝
一種利修理剣ノ習昔之教悪シ今ハシュリケンノシュジト云習有之重々口伝
一無有之拍子ノ事是モ昔ノ教悪シ今ハ無モ有々モ有ト云事有之口伝
一種利修理剣ヲ見過ス事悪シ昔ノ教也今神妙剣ノ習ニ放ト云至教有重々口伝
一両手ノ太刀ハ種利剣ノ勝口モ好シ片手太刀ハ種利剣ヲ放シ神妙剣位好シ
一十手ニ懸口習コト位ヲ放ト云コト有之重々口伝
一戸田流モ同前也
一長道具ニ逢テハ一足一刀長短一味ノ心ニ好コト有之
一水月活人刀ト云習ハ昔ノ教ナリ悪シ重々口伝有之
一水月ニ懸リ敵ニ向テ勝ツ位悪シ是モ昔ノ教也今ノ位有之口伝
一前ニテ勝位デ善悪ニツ有リ口伝

水月三位大事
         草
         行
         真
右重々口伝有之

一水月前ヲ待ニシテ内ニ入ハ先々ノ位好シ重々口伝
一敵キ変化之時息ヲ取打可事
一打被打被打テ勝ハ外ナリ内ニ入ハ打勝チ被打勝位也
一懸待有之事同持処口伝
 又云懸ノ内ノ侍々ノ内懸々々ニ非ス待々ニアラス如此用者ハ多世ニ懸々待々有々ト位ニ備ル所ヲ知者少シ
 眼耳鼻舌心意
 右之習ニ重々口伝有之
一水月ヲ上ニテ取習之事
 三箇捧 発ニ通ル
一月ニテ足ヲ無ニ蹈出シ有ニ勝也有ニモ無々ニモ無ノ習ノ事
一月ニ位ヲ残コト上段ハ上ヲ残シ下窺イ盗ム下段ハ下ヲ残シ上ヲ窺イ盗ム習ノ事
一水ト月ト両ノ習ノ事
一懸口太刀間ニテ気ヲ益シカクル習ノ事
一心ヲ移ト云習有之大事
一味方ノ右太刀ニテ懸ル時ハ左ノ足ヲ益べシ又左太刀ニテ懸ル時ハ右ノ足ヲ益習ノ事無刀同前

神妙剣五之習大事
 太刀之構之事
 鞘之拵之事
 中墨之事
 六寸之事
 圓相之事
臨済金剛王徳山木上坐
右条々口伝有之

一身位ノ習昔シニ替ル教有之大事重々口伝
一敵ハ味方之覚悟次第也
一吟味ハ細ナル好シ心ト勝口ハ大ル好シ
一目付左足拍子此三ツ不入事有之
一病気ヲ付テ勝位モ有之眼看東南意在西北
右重々口伝有之

蹴鞠三位之大事 抱三ッ
重々口伝有之

真意妙剣
意底妙剣
我塞妙剣

右三ヶ之習ニ重々口伝有之



万法帰一此是衆妙門
右之習第一口伝有之

一昔シハ切拍子ヲ嫌タル悪シ今ハ切拍子モ一段好位有之
一空之拍子ハ切拍子ヲ嫌タル故也不入事有之
一餌飼之大事
一捧心ノ語云真言不思儀ナリ観受セントスレハ除無明ヲト用ル時ハハツミテ悪シ昔ノ教也今ハ観受シテ無明ヲ除ク位好シ
一捧心之位敵之拍子見ルコト昔シナリ悪シ捧心モ拍子モ味方次第也敵ヲ推付テ軍ハ何時モ仕位有之
一敵ヲスクムルハ昔ノ気ハ肩サキト云位也悪シ今ハ何ニモ敵ヲ動カシテ勝位有之
一敵ヲスクメント急ハ味方心剣先ニホソリテハツムニ依テ迦ルコト多シ敵ヲスクメスシテ勝位有之
一慇懃ニ疑心ハ狭シ
  広心有実位
  睡念直心位
  無教心位
一敵ノ萠心ヲ勝ヘキ事
一敵之気ヲ竊ム(ぬすむ)習ノ事
一楯モ不入之事
一心之拍子大事

三刕(り) 連
      茂
      没
一玄門具三要

酔後発心 忘我
      知我
不入虎穴争得虎子
右重々口伝有之

          八
心之持所三関 世
          世
一二三三ニ一
右重々口伝有之

無刀之位大事
寸ヲ以テ尺使尺ヲ以丈ヲ使丈モ尺々モ寸々モ分

一懸口歩事昔ノ教悪シ今ノ位有之
一含事悪シ
一手ヲクシカサル習ノ事
一同トリ付ニ習有之 三ツ抱
一拍子之持所構ニ倚習之事
一剛弱ノ習之事
一雲入之鞠之位モ有之
一手之下ルトリツキ悪事
一腰之踞ルナヲシノ事
一下段太刀懸口広事
一足ヲ蹈習之事
利剣雖雛疾飛不断人
右条々口伝有之

五濁之位
 太刀手ニテ不使
 無刀手ニテ不把
 足々ニテ不歩
 目付目ニテ不見
 拍子非拍子
心外無別仏々外無別心
右条々口伝

五事一要
 一之拍子
 一之目付
 一之打
 一之左足
 一之位
作五無間業得大解脱
右条々口伝

一眼刀之目付 指鴉(からす)為鷺
          指鷺為鴉
一磯打之大事







白圭無?「王占」
右重々不可伝口
唯授一人大事

     柳生兵庫助人道如雲斎
慶安弐武年己丑
  三月十九日  平利厳
     柳生七郎兵衛尉
           平厳知

サブコンテンツ

※現在、愛知県の主に豊田市周辺で新陰流の剣術の稽古を行っています。
若干名(1~2人位?)本気で稽古したい人を募集します。
希望される方は誠意のあるメールをお願いします。
トンデモメールは基本的に無視します。

このページの先頭へ